活動報告

第32回例会卓話「たった一人のあなたを救う」

2017年03月03日

「たった一人のあなたを救う」

一般社団法人再チャレンジ支援機構 理事
公益社団法人日本駆け込み寺 代表理事
玄 秀盛様


横浜東ロータリークラブのみなさま、日頃から大変お世話になっております。本日は例会にお招きいただき、まことにありがとうございます。
本日は「たった一人のあなたを救う」と題して、私の活動や理念についてお話をさせていただきます。
早口の上、関西弁ですので、お聞き苦しい点もあるかとは思いますが、ご容赦いただければ幸いです。最後までどうぞよろしくお願い致します。

【はじめに】
新宿歌舞伎町にある公益社団法人日本駆け込み寺は、「たった一人のあなたを救う」をモットーに、DV、家庭内暴力、金銭トラブル、ストーカー、虐待など、年齢・性別・国・宗教を問わず、また被害者・加害者も問わず、人生のさまざまな問題を抱えた方々の相談を受けサポートしています。いわゆる「よろず相談所」。人助けをしている法人です。
平成14年、日本駆け込み寺の前身であるNPO法人日本ソーシャル・マイノリティ協会を設立し、平成24年公益社団法人日本駆け込み寺に組織変更しました。平成24年7月には駆け込み寺仙台支部を開設。現在に至っています。

【「人助け」を始めたきっかけ】
私は、昭和31年、大阪市西成区で生まれました。20代から40代は文字通り「金儲け」に心血を注いでいました。平成12年にほんの気まぐれで行なった献血から、白血病の原因となるウイルスの保菌者であることが判明。それを機に私は一切の過去を捨てました。悩み苦しむ人々にこの身体を使ってもらおう、そして自身の「生きる証」を残そうと思い、「人助け」の活動に身を投じました。
活動を始めた当初は、男性に食い物にされているような女性や子どもの相談だけを受けていました。
しかし、次第に被害者の対応だけでは、問題の根本的な解決にはならないことがわかってきました。例えばDVの被害者女性を安全な場所に逃がしても、加害者の男性は彼女を探して彼女の親族や友人のところに行きます。そして、そこでまた新たな被害者をつくるのです。加害者と直接話をすることが、新たな被害者を生まない有効な方策だと気づいた私は、以来、被害者と加害者が存在する案件は、必ず加害者を呼んで話をすることにしました。そうすることが、被害者のみならず、被害者の家族、加害者本人、加害者の家族、被害者や加害者の周囲にいる関係者を救うことになります。それは、犯罪の連鎖・不幸の連鎖を未然に防ぐことにもつながっていくのです。

【罪を犯した人の社会復帰支援】
怒りや不満を女性や子どもに向ける人たちの中に、刑務所出所者が少なからずいることには割と早い段階で気づきました。彼らは「出所者」というレッテルのため、なかなか仕事に就けません。刑務所にいた間の履歴書の空白が説明できません。暴力団上がりだったり、入れ墨があったり、指の欠損がある場合などは、なおさら社会から疎外されます。そういう鬱憤が、身近な女性に暴力をふるったり、他人を傷つけたり、再び罪を犯したり、といった歪んだ方向に進ませます。「刑務所出所者を支援しなければ再犯は防げない。また新たな被害者を生んでしまう。」そんな思いから、私の加害者対応はさらに加速していきました。
平成26年4月に、出所者やひきこもり等、社会復帰や社会生活が困難な方の支援を目的として、元最高検察庁検事の堀田力先生をはじめ各界の先生方のご配意を賜り、一般社団法人再チャレンジ支援機構を設立しました。私も理事を務めております。
私の著書や私が監修したコミックなどが刑務所内に設置されている関係からか、駆け込み寺には服役中の方からも相談の手紙が送られてきます。出所したその足で相談に来る方もいます。帰住地がない、就労先がない、経済的に自立できない等々、出所後の生活に不安を抱えている方がほとんどです。中には所持金が50円しかないという方もいました。
また、ご家族からも「地元に戻って来られては困る」「これ以上迷惑をかけられたくない」「縁を切りたい」という切実な相談が寄せられます。出所者のご家族もまた被害者なのです。
刑務所出所者の就労支援として、協力企業様に入寮と就労のお願いをしてきました。協力企業様の多くは建設業や介護施設です。そこで真面目に働き、すでにリーダーとして活躍している人もいる一方、人間関係につまずいたり、問題を起こしたりして、就労先を辞める例を何度も目にしてきました。昔の仲間に会いに行ったまま、何も言わず姿を消してしまう人もいます。
「紹介した出所者がいなくなる」ということを幾度か経験するうちに、「住まい」と「仕事」の提供だけでは社会復帰が困難な人が多いことに気づきました。彼らは、彼らの過去を知らない人とコミュニケーションをとることが苦手です。過去を隠して話をすれば矛盾が生じますし、意を決して正直に話しても、必ずしも過去を受け入れてもらえるとは限りません。また、過去を知った上で引き受けてくださる職場でも、もともと社会適応能力が高くないため、結局は人との付き合いを避けるようになり、職場にも居場所がなくなってしまうのです。
駆け込み寺でも前科のある人を職員として採用したことが何度かありますが、仕事よりも先に基本的な生活態度や人との関わり方、そして自分の居場所のつくり方の指導に多くの時間を割いていました。出所者の社会復帰には、本当に多くの手間と長い時間がかかるのです。

【出所者支援居酒屋の展開】
出所者の自立と再犯防止は政策の最重要課題といわれています。昨年12月には「再犯の防止等の推進に関する法律」が成立しました。再犯防止には、出所後の雇用先確保が重要ですが、出所者の社会適応力の低さとともに、社会一般の「出所者」への負のイメージや先入観もその就労機会を阻む原因となっています。
出所者支援居酒屋の構想を抱き始めたのは5~6年前からです。社会(人)との濃密な関わりこそが、再犯防止と社会復帰を促すための訓練になると考えたからです。また来店してくださったお客様に、出所者が懸命に社会復帰を目指して働く姿を見ていただければ、出所者に対する恐怖心や猜疑心という負のイメージや先入観の改善も期待できます。
この構想はなかなか実現しませんでした。構想自体には「素晴らしい。これからの社会には必要な事業ですね」と言っていただいても、最後は「玄さんでなければできませんよ」で話が終わってしまうことが続きました。それでも私はあきらめませんでした。
紆余曲折の末、平成27年4月に「株式会社セクションエイト」様のご協力のもと、出所者支援居酒屋『新宿駆け込み餃子』が開店しました。居酒屋の場所は歌舞伎町にこだわりました。出所者にとっては誘惑だらけの町です。その誘惑に打ち勝ち、歌舞伎町で社会復帰ができる人なら、再び罪を犯すことはない。そう思ったのです。
店舗で働く出所者の指導と管理監督は再チャレンジ支援機構が行なっています。仕事だけではなく生活全般に係る相談を受け、社会復帰に向けた支援に力を注いでいます。手間も時間もかかりますが、着実に成果は上がっていると思います。『新宿駆け込み餃子』にひとりでも多くのお客様に足を運んでいただき、社会復帰のために奮闘する出所者の姿をご覧いただければ嬉しく思います。
社会は出所者に寛容ではありません。罪を犯したのですから当然と言えるでしょう。しかし、罪を償い、本気で社会復帰を望む人に対しては、やはりその社会復帰を応援する社会であってほしいと願っています。

【被害者も加害者も生まない社会】
人を被害者と加害者に分けてしまう不幸な犯罪を未然に防ぐことができれば、犯罪の連鎖・不幸の連鎖は断ち切れます。これこそが私の目指す「被害者も加害者も生まない社会」です。
彼らが二度と犯罪と関わることのない人生を歩めるよう、これからも目の前の「たった一人のあなたを救う」活動に邁進してまいります。
みなさまには今後ともご支援を賜りますよう、よろしくお願い致します。本日はまことにありがとうございました。



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